製造現場では、設備の安定稼働が生産活動を支える重要な要素となります。
しかし、長年使用している設備では、経年変化や摩耗によってさまざまな課題が発生することがあります。
そのような課題に対して、必ずしも設備更新や大規模な改造が必要になるとは限りません。
現場をよく観察し、設備の動きや作業方法を見直すことで解決できるケースもあります。
今回は、加熱炉への材料投入工程で発生していた課題に対し、設備の動作を見直すことで改善につなげた事例をご紹介します。
設備停止につながっていた課題

図1:加熱炉周辺の設備構成。予熱炉から加熱炉へ材料を搬送する工程を対象に改善を行いました。
設備導入から長期間が経過する中で、加熱炉入口で材料を受け渡す際に位置ずれが発生することがありました。
その影響で設備が停止し、作業者による確認や調整が必要となっていました。
設備停止は、その都度生産の流れを止めてしまうため、生産効率に影響を及ぼします。
また、加熱炉周辺は高温環境であることから、突発的な点検や調整作業は作業者にとっても負担となります。
継続的に安定した生産を行うためには、こうした問題を根本的に解決する必要がありました。
改善前

図2:改善前の状態。材料の受け渡し時に段差が生じ、設備停止につながることがありました。
- 材料搬送時の位置ずれ
- 設備停止による生産ロス
- 点検や調整作業の発生
- 高温環境による作業者の負担増加
現場観察から原因を追究
これまでも部品交換や高さ調整などの対策は行われていました。
しかし、一時的に改善しても、時間の経過とともに同様の問題が発生し、根本的な解決には至っていませんでした。
そこで改めて着目したのが、「設備がどのように動いているのか」という点です。
実際の稼働状況を観察しながらローダーの動きを確認したところ、材料の受け渡し時における動作順序やタイミングに改善の余地があることが分かりました。
設備の不具合というと、部品の劣化や機械的な問題に目が向きがちです。
しかし今回の事例では、設備そのものよりも「どのように動かしているか」が課題解決のポイントとなりました。
現場では日々当たり前に行われている作業の中に、多くの改善のヒントが隠れています。
設備をより深く観察し、本当の原因を探ろうとしたことが今回の改善の出発点でした。
動作順序の見直しによる改善
原因を分析した結果、設備の構造を変更するのではなく、制御プログラムを見直すことにしました。
従来は、材料を受け取る際のローダー動作によって、位置ずれが発生しやすい状態となっていました。
そこで、材料を受け取る際の動きと、その後に加熱炉へ搬送する際の動作順序を変更しました。
改善前

改善後

ローダー上昇のタイミングを変更し、材料を安定して受け渡せるようにしました。
設備を大きく改造することなく、既存設備を活用しながら改善できたことは、この取り組みの大きな特徴です。
設備の改善というと、既存設備の更新や新たな装置の導入を想像しがちですが、現場の知恵と工夫によって課題を解決できるケースも少なくありません。
今回も、設備の能力を最大限に活かす視点から改善を進めました。
改善によって得られた効果
動作順序の見直しによって、材料搬送時に発生していた位置ずれは解消されました。
その結果、設備停止の削減につながり、生産工程の安定化を実現することができました。
また、設備停止への対応や再調整の機会が減少したことで、保全作業の効率化にもつながっています。
さらに、これまで発生していた突発的な作業が減ったことで、高温環境下での対応機会も減少しました。
これは生産面だけでなく、作業環境や安全面の改善という意味でも大きな成果といえます。
改善後
- 材料搬送時の位置ずれを解消
- 設備停止を削減
- 点検・調整作業を削減
- 設備の安定稼働
- 作業環境と安全性が向上
今回の改善は決して大規模なものではありません。
しかし、こうした現場の工夫の積み重ねが、生産性・品質・安全性の向上につながっています。
小さな気づきが大きな成果につながる
今回の改善事例は、設備更新による改善ではなく、「現場をよく観察すること」から生まれた取り組みです。
設備に問題が起こったとき、すぐに設備そのものに原因を求めるのではなく、動きや使い方まで含めて見直すことで、新たな改善の可能性が見えてくることがあります。
ものづくりの現場には、まだ多くの改善の種が存在しています。
その種を見つけ出し、一つひとつ形にしていくことが、より良いものづくりにつながります。
ニチダイでは、これからも現場の気づきや工夫を大切にしながら、改善活動を積み重ね、品質・生産性・安全性の向上に取り組んでいきます。