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金属加工の基本ガイド―主な種類や特徴、選び方のポイント

金属加工の基本ガイド―主な種類や特徴、選び方のポイント

金属加工は、製品の材質や形状、求める精度やコストに応じて最適な方法を選ぶことが、品質とコストパフォーマンスを両立させるために重要です。
本コラムでは、精密鍛造金型の専門家である生産本部 製造部次長 花弥が、金属加工の主な種類や特徴、金属加工を選定するためのポイントを紹介します。

【この記事でわかること】

  • 金属加工の定義と目的
  • 切削、鍛造、鋳造など主要な加工技術の特徴
  • 加工方法を選定するための4つのポイント

金属加工の全体像:5つの分類で理解する

金属加工という広範な技術を理解するため、実務でよく用いられる5つの分類から全体像を捉えましょう。

金属加工の定義と目的

金属加工とは、工具や機械を用いて金属材料に意図的な変形や変更を加え、所定の形状、寸法、機能を持つ製品や部品を作り出す技術の総称です。

その目的は、単に形を作るだけでなく、製品に必要な強度や精度を与え、機能性を向上させることにあります。あらゆる工業製品は、この金属加工技術なくしては成り立たない、ものづくりの根幹を支える重要なプロセスです。

【一覧表】5つの基本分類と代表的な加工方法

金属加工は、材料へのアプローチ方法によって以下の5つに大別されます。

大分類概要代表的な加工方法
(一例)
除去加工材料塊から不要な部分を削り取る切削加工、研削加工
塑性加工固体状態のまま力を加えて変形させる鍛造、プレス加工
鋳造金属を一度溶かして液体にし、型に流し込むダイカスト、砂型鋳造
付加加工材料を付け足したり積層したりする溶接、金属3Dプリンタ
接合加工複数の部品を一つに繋ぎ合わせる溶接、ねじ締結

金属加工の種類と特徴

前章で紹介した5つの分類に沿って、実務で用いられる代表的な加工技術を見ていきましょう。

材料を取り除いて形作る「除去加工」

除去加工は、ドリルや刃物といった工具を使い、金属の塊から不要な部分を取り除いて目的の形状を作り出す、最も基本的な加工方法です。設計の自由度が高い反面、加工時間や材料のロスが大きくなる側面も持ち合わせています。高精度な単品加工から量産部品の仕上げまで、目的に応じて幅広く用いられています。

切削加工

旋盤やフライス盤といった工作機械を用い、刃物(バイトやエンドミル)で金属を削る加工法です。様々な形状に対応できる汎用性の高さが特徴で、試作品のような一点ものの製作から、量産品の追加工まで広く活用されています。μm(マイクロメートル)単位の精度を出せるため、精密部品の製造には欠かせない技術ですが、複雑な形状ほど加工時間が長くなる傾向にあります。

関連記事:【基礎知識】切削加工の特徴や種類とは?鍛造との違いや製品例について

研削加工

高速で回転する砥石(といし)を工作物に当て、表面をわずかに削り取ることで、極めて高い寸法精度や平滑な仕上げ面を得る加工法です。切削加工の後に行われる仕上げ工程として用いられることが多く、ミクロン単位以下の精度が要求される金型部品や精密機械部品の製造に不可欠です。加工に時間がかかるため、コストは比較的高くなる傾向にあります。

力を加えて形を変える「塑性加工」

塑性加工は、金属が持つ「力を加えると変形し、力を取り除いても元に戻らない」という性質(塑性)を利用する加工方法です。材料を削らずに圧力をかけて成形するため、材料の無駄が少なく、金属の内部組織が緻密になることで強度が高まるという大きな利点があり、大量生産に適しています。

関連記事:塑性加工とは?金属加工の種類・特徴と製品例を紹介

鍛造

金属材料を加熱し、ハンマーやプレス機で叩いて圧力を加えることで成形する加工方法です。金属の内部にある結晶を整え、組織を緻密にする「鍛流線(ファイバーフロー)」が形成されるため、非常に高い強度と粘り強さが得られます。特に高い信頼性が求められる自動車のエンジン部品や航空機の部品などに用いられ、製品の安全性を支える技術です。鍛造には熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造の3種類があり、それぞれに強みがあります。

関連記事:鍛造とは?種類・メリット・鋳造との違いまで基礎からわかりやすく解説

プレス加工

対になった金型(雄型と雌型)の間に金属の板材を置き、プレス機械で大きな圧力をかけることで、板を打ち抜いたり、曲げたり、絞ったりして成形する加工方法です。短時間で同じ形状の製品を大量に生産できるため、自動車のボディや家電製品の筐体など、あらゆる製品の製造に用いられています。金型の製作に初期コストがかかるため、主に量産品の加工で採用されます。

関連記事:プレス加工とは?特徴や他工法との違い、工法選定のポイントを解説

金属を溶かして形作る「鋳造」

鋳造は、金属材料を完全に溶かして液体にし、砂や金属で作った型(鋳型)に流し込み、冷やし固めて成形する加工方法です。塑性加工とは異なり、一度液体にするため、複雑な形状の製品を一体で製造できるメリットがあります。エンジンブロックやマンホールの蓋など、大型の製品に広く用いられます。代表的な方法に、精密な金型を用いる「ダイカスト」や、砂で型を作る「砂型鋳造」などがあります。

材料を積み重ねて形作る「付加加工」

付加加工は、除去加工とは全く逆の発想で、何もないところに必要な部分だけ材料を付け加えて立体物を造形する技術です。代表的な方法である金属3Dプリンタは、金属粉末を一層ずつ敷き詰め、レーザービームなどで溶かし固める工程を繰り返すことで、三次元モデルを造形します。データから直接製品を作れるため金型が不要で、複雑な内部構造を持つ部品など、高付加価値な製品の製作に適しています。

材料同士を繋ぎ合わせる「接合加工」

接合加工は、複数の金属部品を熱や圧力などで一体化させる技術の総称です。一つの部品では作れない大きな構造物や、複雑な形状の製品を組み立てる際に用いられます。代表的な方法が溶接で、金属部品の接合部を熱で溶かして融合させることで、非常に強力な接合強度が得られます。建築物の鉄骨や船舶の製造など、高い信頼性が求められる場面で広く活用されています。

形状加工後の品質を高める「表面処理・熱処理」

ここまでの加工は、主に金属の「形状」を作り出す技術です。しかし、製品として完成させるには、錆びにくさ(耐食性)、摩耗への強さ(耐摩耗性)、そして求められる硬さや粘り強さを付与する工程も必要です。その役割を担うのが、めっきやコーティングといった「表面処理」や、金属組織そのものを変化させる「熱処理」です。これらは最終的な製品の寿命や性能を大きく左右する、仕上げの技術と言えます。

金型表面処理については、以下もご確認ください。
金型表面処理の最適化 ― 品質・寿命を支える選定のポイント

金属加工方法を選定する4つのポイント

ここまで多様な加工方法を紹介しましたが、自社の製品にとって最適な方法を選ぶには、いくつかの判断基準が必要です。ここでは、加工方法を選定する上で検討すべき4つの重要なポイントを解説します。

選定ポイント:精度

製品に求められる寸法公差や表面の粗さは、加工方法を選定する上で最も基本的な項目です。例えば、ミクロン単位の精度が必要な部品であれば、最終的な仕上げとして研削加工が必須となります。一方、それほど高い精度が不要な構造部品であれば、コストが比較的安いプレス加工や溶接が選択肢になるでしょう。まずは要求される精度に対応できる技術を絞り込みます。

選定ポイント:コスト

コストは、金型などの「初期費用」と、製品1個あたりの「量産単価」の2つの側面から考える必要があります。プレス加工や鍛造は、金型の製作に高い初期費用がかかりますが、量産単価は安く抑えられます。反対に、切削加工や金属3Dプリンタは初期費用が不要なものの、1個作るのに時間がかかるため量産単価は高くなります。生産数量とのバランスを考えることが重要です。

選定ポイント③:数量

製品をいくつ作るのか、という生産数量(ロットサイズ)は、コストと密接に関連する重要な選定ポイントです。試作品などの1個から数個程度の生産であれば、金型が不要な切削加工や金属3Dプリンタが適しています。一方、数千、数万個以上の大量生産を行うのであれば、生産スピードが速いプレス加工や鍛造がコストパフォーマンスの面で優位性を持つ傾向にあります。

選定ポイント④:材質と形状の複雑さ

加工する金属の材質や、製品形状の複雑さも重要な判断基準です。チタンのような硬くて削りにくい「難削材」の加工には、放電加工などの特殊な技術が必要になることもあります。
また、形状の複雑さには種類があります。例えば、内部に空洞を持つ中空構造や、アンダーカットと呼ばれる型が抜けない形状は、鍛造やプレスでは原理的に製造が困難です。こうした形状には、切削加工や金属3Dプリンタが適しています。一方で、歯車の歯形や曲面で構成される複雑な外形(輪郭)は、従来は切削が主流でしたが、鍛造技術の進化により、これらの形状も高精度に成形できるようになっています。

金属加工メーカーの選び方

最適な加工方法が決まったら、次はそれを実現できるメーカーを選定します。単なる外注先ではなく、製品の品質を左右する重要なパートナーと捉え、多角的な視点で見極めることが成功につながります。

メーカー選定でよくある失敗例として、「コスト最優先で依頼したら、品質にばらつきがあり、結局手直しで高くついた」「試作は良かったのに、量産になったら納期遅延が頻発した」「技術的な相談に乗ってもらえず、図面通りの加工しかしてくれないため、より良い製品への改善が進まない」といった声が聞かれます。こうした失敗を避け、長期的な関係を築けるパートナーを見極めるには、表面的な価格や納期だけでなく、その企業が持つ技術力や管理体制をしっかりと見極める必要があります。

  • 得意分野と加工技術: 企業のウェブサイトで過去の加工事例を確認し、自社が依頼したい加工(例: 精密鍛造、微細加工)の実績が豊富かを見極めます。
  • 品質保証体制: ISO9001などの国際認証を取得しているか、どのような検査機器を用いて品質を保証しているかを確認します。安定した品質は、信頼できる体制から生まれます。
  • 設備体制: 高精度な加工を実現できる工作機械はもちろん、品質を保証するための三次元測定機(製品の立体形状を精密に測定する装置)などを保有しているか。設備は、その企業の技術力を示す客観的な判断材料となります。
  • 実績: 同業界や類似製品での加工実績があるか。業界特有の要求事項への理解度は、スムーズな取引の前提となります。
  • コミュニケーション: 計画段階から技術的な相談に乗ってくれるか、コストダウンや品質向上につながる技術的な提案をしてくれる姿勢があるか。技術的な対話ができるパートナーは、製品価値の向上に貢献します。

最適な金属加工で、競争力のあるものづくりを

金属加工には「除去」「塑性」「鋳造」「付加」「接合」という5つの基本分類の中に、さらに多様な技術が存在します。最適な方法を選定するには、単一の視点ではなく、製品に求められる精度、コスト、数量、材質や形状といった複数の要素を総合的に比較検討することが求められます。
どの加工技術を選択するかが、最終的な製品の品質や性能に影響を与えます。

ニチダイが提供するものづくりサービス

ニチダイでは、金属加工の中でも特に塑性加工の一分野である「精密鍛造」において、長年の経験と技術を蓄積してきました。その知見を活かし、お客様のものづくりを多角的にサポートするサービスを提供しています。

高品質なものづくりのプロセス全体を支援する「トータルエンジニアリング」
最適なものづくりには、加工技術の選定だけでなく、その前段階の工程設計が重要です。ニチダイでは、CAE解析による工程設計から金型製作、試作、量産までを一貫してサポートし、お客様のパートナーとしてプロジェクト全体の最適化に貢献します。
▶ ニチダイの「トータルエンジニアリング」

特定の技術課題を解決する「受託開発」
「新工法を開発したい」「試作を通じて、製品の性能を評価したい」といった、お客様が抱える個別の技術課題に対し、社内の研究開発用プレスを活用して支援します。ネットシェイプのような高度な精密鍛造技術を駆使し、お客様の課題解決を強力に後押しします。
▶ ニチダイの「受託開発サービス」

金属加工に関するよくあるご質問(FAQ

ここでは、金属加工に関して多く寄せられる質問にお答えします。

 Q. 金属加工とプラスチック加工の大きな違いは何ですか?

A. 最も大きな違いは材料特性です。金属は強度、剛性、耐熱性に優れますが、一般的に重く加工に手間がかかります。一方、プラスチックは軽量で複雑な形状の大量生産に適していますが、強度や耐熱性は金属に劣ります。製品に求められる性能に応じて使い分けられます。

Q. 金属加工で使われる代表的な機械には何がありますか?

A. 代表的なものに、材料を回転させて削る「旋盤」、工具を回転させて削る「フライス盤(マシニングセンタ)」、板金を打ち抜く「プレス機」、高精度な仕上げを行う「研削盤」などがあります。これらの機械を製品の形状や求められる精度に応じて使い分けます。

Q. なぜ金属加工の後に、めっきや塗装などの表面処理が必要なのですか?

A. 主な目的は、製品に新たな機能を付与することです。具体的には、錆を防ぐ「耐食性」、摩耗に強くする「耐摩耗性」、見た目を美しくする「装飾性」などが挙げられます。形状を作るだけでは満たせない性能を補い、製品の価値と寿命を向上させるために不可欠な工程です。

Q. 金属加工を依頼する際に最低限準備すべきことは何ですか?

A.「図面(2D/3D)」「希望する材質」「必要な数量」の3点はご準備ください。これに加えて「製品の用途」や「希望納期」を伝えていただくと、より具体的で精度の高い提案や見積もりが可能になります。

Q. 金属加工のコストは、主にどのような要因で決まりますか?

A. 主な要因は「材料費」「加工時間」「必要となる設備や工具」の3つです。高価な材料を使ったり、形状が複雑で加工に時間がかかったりすると、コストは上昇します。また、プレスや鍛造のように専用の金型が必要な場合は、その初期費用も考慮に入れる必要があります。生産数量によって、これらのコストバランスは大きく変動します。

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