金型を用いた鍛造・プレス加工では、バリが発生しやすく、多くの現場で課題となっています。 本コラムでは、バリが発生する原因を整理し、現場で実践できる対策を解説します。
目次
「バリ」とは何か?
金型加工におけるバリとは、金型の合わせ面(パーティングライン)から材料がはみ出してできる不要な突起です。製品としては不適切であり、後工程での除去が避けられません。
バリが与える悪影響
バリが発生すると、製品の品質や生産効率にさまざまな問題が生じます。
- 寸法精度の低下:バリが残っていると規格外要因となり、組み付け不良や機能の不具合が発生する原因になります。
- 外観品質の悪化:見た目が損なわれ、不良と判断される原因になります。
- 仕上げ工数の増加:バリ取り作業が必要になり、手作業や追加工程が発生します。
- 歩留まりの低下:バリが大きい場合は規格外となり、廃棄コストが増加します。
バリは見た目だけではなく、品質やコストにも影響を及ぼす要因となります。
バリの種類
バリは加工方法によって、いくつかの種類に分類できます。
| バリの種類 | 発生する加工 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鍛造バリ | 鍛造加工 | 型合わせ面からはみ出した比較的厚みのある突起 |
| プレスバリ | せん断・打ち抜き | エッジ部分に発生する薄く鋭利な突起 |
| 成形バリ | 樹脂成形・ダイカスト | パーティングラインに沿って薄く広がる |
自社の加工方法に応じて、発生しやすいバリの種類を把握しておくことが大切です。
バリが発生する主な原因
バリの発生原因は、大きく「設計」「摩耗・劣化」「成形条件・材料」の3つに分類できます。
設計上の原因
金型の設計に問題があると、バリが発生しやすくなります。
パーティングラインの隙間・段差
金型の合わせ面であるパーティングラインに段差や隙間があると、そこから材料がはみ出し、バリが発生します。
クリアランスの設定不良
上型と下型のクリアランス(隙間)が大きすぎると、材料がその隙間に入り込み、バリの原因になります。特にプレス金型では、パンチとダイのクリアランスが適切でないと、せん断時に材料が引きちぎられる形でバリが発生します。
摩耗・劣化による原因
金型は使い続けることで摩耗が進み、バリの発生原因になります。使用が進むと、摩耗によってパーティングラインに隙間が生じやすくなります。初期は問題がなくても、摩耗の進行とともにバリが目立つようになります。また、摩耗は均一には進行せず、材料の流れが集中する部分や圧力がかかりやすい箇所から劣化が始まります。
その結果、隙間が広がった箇所にだけバリが発生することもあります。
金型の表面硬度の不足や、表面処理が劣化している場合、摩耗の進行が早まります。
特に高温環境下で使用される鍛造金型では、熱疲労や酸化により表面が荒れ、材料との摩擦が大きくなります。
成形条件・材料による原因
金型自体に問題がなくても、成形条件や材料の状態によってはバリが発生する場合があります。
成形条件の不均一
鍛造加工では、素材の加熱温度や成形圧力が適切でないと、材料の流動性が変化してバリが発生しやすくなります。温度が高すぎると材料が柔らかくなり、隙間に流れ込みやすくなります。一方で、温度が低すぎると充填不足や割れの原因になります。
また、潤滑剤の塗布量にムラがあると、摩擦が部分的に変化し、材料の流れに偏りが生じます。
材料配置の不適切
材料の初期配置が適切でない場合、金型内で材料の流れが偏り、特定の箇所に圧力が集中します。その結果、局所的に大きなバリが生じることがあります。
過充填の影響
材料の投入量が多すぎると、余分な材料が金型の隙間に押し出され、バリとして現れます。特に鍛造では、材料のロットごとに重量や密度がばらつくことがあり、条件管理が不十分だと過充填が発生します。
バリ発生を抑えるための対策
バリの発生原因を特定したら、適切な対策を講じることが重要です。 原因が「設計」「摩耗・劣化」「成形条件・材料」のどこにあるかによって、取るべき対策は異なります。
設計上の対策
設計段階での対策は、バリの発生を根本から抑える効果があります。パーティングライン、クリアランスなど設計の各要素を見直すことで、バリの発生リスクを低減できます。
パーティングライン設計の見直し
設計段階でバリを抑えるため、以下の工夫が有効です。
- 合わせ面の接触面積を増やし、隙間を最小化する
- 段差が生じにくい形状設計にする
- バリが出ても取り除きやすい位置にパーティングラインを設ける
クリアランスの最適化
金型のクリアランスは、材料の種類や板厚、製品形状に応じて最適化する必要があります。一般的には板厚の5〜10%程度が適正とされていますが、材質や形状によって適切な値は変わります。
経験則だけでなく、CAE(Computer Aided Engineering)解析を活用することで、材料の流動や応力分布を事前に予測し、バリが発生しやすい箇所を特定できます。
シミュレーション結果に基づいて設計を見直すことで、製作後の手直しを減らし、コストと時間の両面で効率化が図れます。
CAE解析については、以下で詳しく解説しています。
摩耗・劣化への対策
金型の摩耗や劣化が原因のバリには、定期的なメンテナンスや表面処理の見直しが効果的です。
摩耗部位の補修
摩耗が進行した金型は、研磨による形状修正を行います。ただし、補修にはコストと時間がかかるため、どのタイミングで実施するかの判断が重要です。バリの大きさや使用回数のデータを記録し、「バリが○mm以上になったらメンテナンス」といった基準を設けることで、計画的な管理が可能になります。
表面処理の改善
金型の寿命を延ばし、バリの発生を抑えるには、表面処理の改善も有効な手段です。
- 窒化処理:表面硬度を高め、摩耗を抑制
- PVDコーティング:低摩擦で耐熱性に優れる
- DLCコーティング:潤滑性が高く、材料の焼き付きを防ぐ
金型の表面処理については、以下も参考になります。
成形条件・材料の対策
成形条件・材料によるバリには、日々の条件管理と材料管理の徹底が有効です。
データに基づく条件管理
成形条件を安定させるには、まず現状を正確に把握し、データとして記録することが重要です。鍛造温度の測定と記録、成形圧力のモニタリング、潤滑剤の種類・塗布量の標準化などを実施します。
これらのデータをもとに、バリが少ない条件を見つけ出し、標準作業として定着させます。特に作業者による条件のばらつきを防ぐには、温度計や圧力計などの計測機器を活用するのが効果的です。
また、材料の初期配置や予備成形工程の見直しも、材料流動の偏り防止に有効です。
材料のばらつき抑制
材料の重量管理を徹底し、適切な投入量を維持することが重要です。
また、ロットごとに化学成分や硬度に差があると、同じ条件でもバリの発生状況に違いが生じることがあります。
材料の受入検査を徹底し、ロットごとの特性を把握することで、条件設定の精度を高めることができます。
バリの原因を特定し、適切な対策を
バリを効果的に防ぐには、まず原因を正確に把握することが重要です。バリの原因が設計・摩耗・成形条件・材料のどれにあるかによって取るべき対策は大きく異なります。
自社の状況に応じて、これらの対策を組み合わせることで、より効果的にバリを抑えることができます。バリ対策は、品質の向上に加え、仕上げ工数やコスト面の改善にもつながります。原因の特定から対策、効果検証までのサイクルを繰り返すことで、継続的な改善が期待できます。
ニチダイでは、バリ低減に向けた包括的なサポートを提供しています。
設計段階ではCAE解析により、金型分割面の接触圧力を比較してバリが出やすい箇所を特定するとともに、鍛造品の変形過程から材料が分割面に充満するタイミングを確認し、バリの発生を間接的に評価します。
精密鍛造金型の製作では、パーティングラインやクリアランスの最適化により、解析結果に基づいた最適な金型設計を実現します。
さらに、開発から量産までの一貫したトータルエンジニアリングにより、金型の摩耗対策や成形条件の最適化にも対応します。
ニチダイの取り組みやサービス内容については、以下をご参照ください。

